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ドバイ万博とは何だったのか？未来を体感する一大イベントの全貌
2020年に予定され、パンデミックの影響で2021年から2022年にかけて開催された「ドバイ万博（Expo 2020 Dubai）」は、21世紀の万博として革新的なテーマと演出が話題となりました。世界中から192の国と地域が参加し、「Connecting Minds, Creating the Future（心をつなぎ、未来を創る）」をテーマに掲げ、技術、文化、社会課題への取り組みなど、多様な分野での展示と体験が可能な国際的イベントでした。
ドバイ万博の特徴は、単なる博覧会にとどまらず、訪問者が未来のライフスタイルを“実際に体験できる”点にありました。AI、再生可能エネルギー、スマートシティ、拡張現実など、最先端の技術を用いたパビリオンが数多く立ち並び、それぞれの国が誇る「未来の提案」を提示していました。特にアラブ首長国連邦（UAE）のホスト国パビリオンでは、砂漠と共生する都市の姿がインタラクティブに紹介され、持続可能な未来に向けた挑戦が体感的に伝わってきました。
また、文化的な側面でも多様性と共生を象徴する内容が多く、音楽、ダンス、食文化の展示も豊富で、まさに「未来を楽しむ空間」として機能していました。特定の技術だけでなく、それが人々の生活にどう影響を与えるかを示す試みが多く、訪問者にとってはただの展示ではなく「思考する体験」となったのです。
このような環境の中で、私は単なる観光客としてではなく、一人の地球市民として「これからの世界をどう捉えるか」を深く考えるようになりました。ドバイ万博は、私の価値観を大きく揺さぶり、「世界を見て回りたい」という願望の種を蒔く出来事となったのです。
一歩踏み出すきっかけに――ドバイ万博で芽生えた「世界を見たい」という思い
ドバイ万博での体験は、ただ楽しかったというだけで終わるものではありませんでした。私の中で明確に変わったのは、「もっと多くの国や文化に触れたい」という感情が芽生えたことです。展示物のひとつひとつ、国ごとの思想や表現、デザインの違いなどが強く印象に残り、「世界はこんなにも多様なのか」と驚きを持って受け止めました。
例えば、北欧諸国のパビリオンでは環境問題への先進的な取り組みが強調されており、気候変動対策としての電動交通やゼロ・エミッションの建築技術が紹介されていました。一方、アジア諸国では急成長する都市化とそれに伴う文化の変容がテーマとなっていて、特に韓国のパビリオンでは、都市生活とテクノロジーの融合がきわめてスタイリッシュに演出されていました。
こうした国ごとの個性や未来への向き合い方を見ているうちに、「展示の向こうにある本当の街、人々の暮らしを自分の目で見てみたい」と思うようになりました。机上の情報ではなく、現地の空気、話し声、料理の香り、街並みの雑踏——それらを肌で感じたいと思ったのです。
ドバイ万博は、そのスケールの大きさもさることながら、「世界を見ることの面白さ」を凝縮した空間であり、それが私の旅心に火をつけました。それまではどこか遠いものとして感じていた世界各国の都市が、急に現実味を帯びて「次はどこに行こうか」と自然に考えるようになったのです。こうして私は、未来都市を巡る世界旅行に出発する決意を固めました。
世界旅行の第一歩：ドバイ出発、未来都市を巡る10日間の旅程紹介
ドバイ万博を訪れた数ヶ月後、私はいよいよ10日間の未来都市をめぐる旅に出ることを決めました。この旅のテーマは「テクノロジーと人間の共生が実現している都市を自分の目で確かめる」こと。そのため、目的地の選定は入念に行いました。行き先は、ドバイ→シンガポール→ソウル→ヘルシンキ→帰国というルートです。航空便の接続や時差の影響を考慮しながら、効率よく移動できる旅程を構築しました。
旅の初日はドバイに再滞在し、万博で感じたことを改めて現地で整理しました。未来の都市がどうあるべきか、どう進化しているのか、それを意識的に観察しながら街を歩いたのです。特にダウンタウン・ドバイ周辺では、自動運転バスや太陽光を活用したスマートビルの導入が進んでおり、まさに万博の延長にある現実を確認できました。
続いてシンガポールへ移動。ここでは「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」や「マリーナ・ワン」など、自然とテクノロジーの融合を目の当たりにしました。都市開発の中に自然を組み込むという思想が街全体に行き渡っており、その完成度の高さには圧倒されました。
その後の旅先であるソウルとヘルシンキについては次の見出しで詳しく触れますが、10日間という短い日程の中でも、実際に未来都市に足を運ぶことで得られる情報や感覚は、机上では絶対に得られないものでした。どの都市もそれぞれの個性を持ちながら、確かに未来へ向かって歩みを進めているという点では共通していました。
ハイテク都市シンガポールで味わう未来の暮らしと文化体験
シンガポールは、近未来都市の代表格といえる存在でした。滞在中、まず印象的だったのは都市空間のデザインです。緑が街中にあふれ、最新鋭の建築物でありながらもどこか自然との調和がとれている空間が多く、環境先進国としての哲学が都市そのものに組み込まれていると感じました。特に「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」はその象徴ともいえる存在で、巨大な人工の“スーパーツリー”が夜にはライトアップされ、エネルギーと美の融合を見せてくれました。
公共交通の利便性も抜群で、自動運転の実証実験が一部の区域で行われており、地下鉄も正確無比。街を歩く人々のスマートフォンには、最新のキャッシュレス決済アプリや健康管理アプリが常駐しており、生活のほぼすべてがデジタルと密接に結びついているのが分かります。また、街角にあるゴミ箱には分別センサーが内蔵されており、捨てられたゴミの内容を自動で分類する試みも進んでいました。
さらに感心したのは、ハイテクであるだけでなく、人々のライフスタイルがそれにしっかりと馴染んでいる点です。若い世代だけでなく、高齢の方も問題なく電子決済やアプリ操作をしている姿を見て、「テクノロジーの民主化」がここでは現実になっていることを実感しました。食文化にもデジタルの波は押し寄せており、ホーカーズ（屋台村）でもQRコードによる注文と支払いが可能で、効率的かつ衛生的なシステムが整っていました。
シンガポールでの数日間は、テクノロジーが人間の暮らしをより快適に、そして豊かにする可能性を具体的に感じられた貴重な時間でした。観光地というよりは、「未来を生きている都市」という印象を強く残し、私の旅の目的をさらに確信させてくれる体験となりました。
韓国・ソウルで出会ったスマートシティとリアルタイム翻訳の驚き
次に向かったのは、急成長を遂げた東アジアのテクノロジー都市、ソウルです。韓国は世界有数のデジタル大国として知られており、その中でも首都ソウルは「スマートシティ」構想を具体的に都市開発に落とし込んでいる好例でした。街全体が一種の“テクノロジーの展示場”のようで、移動、食事、買い物、文化体験すべてにおいてデジタルとの接点があります。
まず驚いたのは、リアルタイム翻訳のクオリティです。スマートフォンアプリを使えば、韓国語がその場で日本語や英語に即座に変換され、簡単な会話は全くストレスなく進みました。レストランのメニューや街中の看板もカメラをかざすだけで即座に翻訳されるため、言語の壁が限りなく低くなっていることを実感しました。
また、地下鉄駅やバス停にはAI案内ロボットが設置されており、観光情報から乗り換え案内まで幅広くサポートしてくれます。さらに、住宅地ではスマートポストや顔認証付きの宅配ロッカーも普及しており、「非接触型生活」がこの都市でどれほど進んでいるかを垣間見ることができました。
韓国では特に若者を中心にテクノロジーとの距離が非常に近く、彼らのSNS利用状況やオンライン学習、バーチャルアイドルとの交流文化にも触れました。ここでは仮想空間と現実が混ざり合いながら共存しており、「人とテクノロジーの関係性」は次のステージに進んでいる印象を受けました。
ソウルでの滞在は、単に便利な未来を体験するだけでなく、技術革新が日常の一部となった社会で人々がどのように適応し、生活しているかを観察する機会となりました。この都市でもまた、未来はもう目の前にあるのだと実感しました。
フィンランド・ヘルシンキで実感するサステナブル社会の現実
旅の終盤に選んだのは、北欧の静かな未来都市、フィンランドの首都ヘルシンキです。この街は他の訪問都市と異なり、最先端のデジタル技術というよりも、「持続可能な社会の実現」に特化した都市構造とライフスタイルが特徴的でした。テクノロジーは目立たず、しかし確実に生活に根付いており、それがまた静かに力強く未来を形作っていることを実感させられました。
空港に降り立った瞬間から、その違いは感じられました。移動には電動バスやトラムが中心で、公共交通機関はすべて再生可能エネルギーによって運行されており、都市内の騒音も非常に少ない印象です。市街地には自転車専用レーンがしっかり整備されており、自転車の利用が日常的に推奨されています。地元の人々の暮らしには、無駄を極限まで減らし、自然との共存を意識する姿勢が根づいているのです。
また、レストランやカフェでは地産地消のメニューが主流で、メニューには「CO₂排出量」が表示されている店もありました。これは驚きの取り組みであり、食事の選択一つひとつが環境負荷と関係しているという意識を高める効果があると感じました。ホテルにおいても、部屋の照明や温水がセンサーで管理されており、必要なときだけエネルギーを使う仕組みが徹底されていました。
一方で、市民の教育レベルの高さにも驚かされます。サステナブルな思想は学校教育の初期段階から導入されており、大人も子どもも「自然を守る」という視点で日常生活の選択を行っているように見受けられました。観光客にもその思想は伝わりやすく、ヘルシンキの空気を吸うだけで「地球と共生することの大切さ」が自然と心に染み込んでいくような感覚になります。
この都市での体験は、ドバイやソウル、シンガポールとはまた違った「未来のかたち」を見せてくれました。派手さはないけれど、着実に未来へ向かって歩む姿勢。それがヘルシンキの魅力であり、私の旅の中でも深く印象に残るひとときとなりました。
世界を旅して見えた、未来をつくる国々の共通点と違い
10日間で巡った4つの都市は、それぞれに個性があり、未来に対するアプローチの仕方もまったく異なっていました。ドバイは壮大なビジョンと開発力で「未来を創り出す都市」、シンガポールは自然とテクノロジーの共存による「持続可能な利便性の都市」、ソウルはデジタル生活の進化を体現した「超スマート都市」、そしてヘルシンキは静かに持続可能性を追求する「環境との共生都市」と言えるでしょう。
しかし、それらの都市に共通していた点も確かに存在します。一つは、「未来は都市単体では成しえない」という意識です。どの都市も、グローバルな連携や他国との協力、知識や技術の共有を前提としていました。たとえばドバイでは、各国のパビリオンが連携した展示を行っており、シンガポールでは国際的な研究機関と連携した都市開発が進行しています。未来は一国で実現するものではなく、地球全体での協働が必要不可欠であるという視点が、どの都市にも共通して根づいているのです。
また、「テクノロジーは目的ではなく手段」という考え方も共有されていました。ただ最新技術を導入することに意味があるのではなく、人々の暮らしをどう良くしていくか、社会課題をどう解決するかという目的意識があって初めて、テクノロジーが生きるのだという姿勢は、どの場所でも明確に感じられました。これはドバイ万博でも強調されていた理念と一致しており、私がこの旅に出たきっかけとなった思いとも重なります。
それぞれの都市が直面している課題も異なりますが、それでも共通する解決への姿勢や未来への希望があることに、人類の可能性を感じました。世界を実際に歩いてみることで、表面的な「進んでいる・遅れている」という評価ではなく、「どのような価値観で未来を迎えようとしているか」を深く理解することができたのです。
旅の中で芽生えた新たな視点と未来への希望
この10日間の旅は、単なる観光では終わりませんでした。私は各都市を歩き、見て、触れて、そこに暮らす人々と同じ空気を吸う中で、自分自身の視点が静かに、しかし確実に変化していくのを感じていました。特に印象的だったのは、「未来」という言葉の持つ意味が、旅の前と後でまったく異なるものに変わったことです。
ドバイでは、国家の意志が都市計画に直結しており、人類が理想とする技術都市を実際に形にしている姿に圧倒されました。シンガポールでは、人と自然と技術が調和しながら、快適で効率的な生活が実現されている様子を体感しました。そして、ソウルでは言語や文化の壁を技術が超え、誰もが暮らしやすい社会が形になっていることに感動を覚えました。さらに、フィンランドの静かな環境の中では、人間が地球とどう共生するかという根本的な問いに対する答えが、暮らしのすみずみに息づいていたのです。
それぞれの国が直面する事情や課題は異なりますが、共通していたのは「変化を恐れず、未来に向かって行動する姿勢」でした。そこには、決して後ろ向きではない、前進しようという明確な意志がありました。その意志は、政府だけではなく、街を歩く人々一人ひとりの中にも根づいており、それがまた都市の空気をつくり出していたのです。
旅の中で得たのは、世界の広さや多様性だけではありませんでした。むしろ、自分の暮らしをどう変えていけるか、未来に向けてどんな選択をするべきかという、個人的な問いへのヒントを与えてくれた旅でもありました。未来は「どこか遠くの世界」ではなく、今この瞬間から選択と行動によって築いていけるものだと感じさせられたのです。
この旅の終わりに立ち返って思うのは、「未来を見たい」と思ったきっかけが、結果として「未来を生きる視点」を得る旅に変わったということです。新たな世界に触れた今、私の日常も少しずつ、しかし確実に変わっていくでしょう。それはテクノロジーをもっと意識するようになることかもしれませんし、サステナブルな選択を心がけるようになることかもしれません。何にせよ、この旅が私にとっての「未来の起点」となったことは間違いありません。
まとめ
この「ドバイ万博をきっかけに始まった世界旅行」は、ただの観光記録ではなく、未来という抽象的な概念を現実として実感する旅でした。ドバイの壮大な計画と国際的なビジョン、シンガポールの都市と自然の融合、ソウルにおける技術と人間生活の密接な結びつき、そしてフィンランド・ヘルシンキに見る静かなサステナビリティの実践。これらすべての都市が、異なるアプローチで「より良い未来」のための実践を積み重ねていました。
世界を巡る中で、未来は一つの答えではなく、いくつもの視点と方法で構成されていることを学びました。そしてその未来は、国や地域の努力だけでなく、そこに住む人々の生活意識や選択によって形づくられていくことも、強く実感しました。未来を語るとき、私たちはしばしば技術革新や壮大な計画に目を奪われがちですが、本当に重要なのは「どのように生きたいか」という個々の意志と行動なのです。
10日間という短い期間でしたが、私にとっては人生を見つめ直す濃密な時間となりました。この記事が、これから未来に興味を持ち始める人や、新しい世界を知りたいと願う人の背中をそっと押す存在になれば幸いです。私がこの旅で出会った未来は、誰かの選択でできていた。そしてこれからの未来は、私たち一人ひとりの手の中にあります。
