目次(もくじ)
石川県の魅力が詰まった城巡り旅の始まり
石川県といえば、加賀百万石の歴史が今も色濃く残る地域であり、美しい自然や伝統文化、そして個性豊かな城跡が点在する場所としても知られています。今回の旅では、金沢城を中心に、石川県内に点在する歴史ある名城をめぐりながら、地域ごとの文化や美食、自然風景を存分に味わっていきます。
城を巡る旅と聞くと、武将の戦いや築城の技術に目が向きがちですが、この石川県では、城下町に息づく市民の生活や工芸、伝統行事もあわせて楽しめるのが大きな魅力です。金沢はその代表格であり、城と城下町が一体となって発展してきた歴史を今も色濃く残しています。そのため、ただ建物や城跡を見て回るのではなく、周囲の街並みや暮らしぶり、そして料理や温泉といった地域の文化全体を体感することで、より深くその土地を味わうことができます。
また、石川県はエリアごとに特徴が異なり、加賀地方、能登地方、それぞれに歴史的背景や風土があるため、移動するたびに旅の表情が変わっていくのも楽しみのひとつです。中でも金沢城は旅の軸として非常におすすめで、アクセスがよく、周囲には兼六園や武家屋敷といった名所が集中しているため、初めての石川旅行にもぴったりです。
これから始まるこの旅では、金沢城を皮切りに、小松城や七尾城など、現存する遺構や史跡を訪ねながら、それぞれの城の歴史とその土地の文化、美食、自然とのつながりを紐解いていきます。石川県に広がる「名城の物語」を、ぜひ一緒に体感してみましょう。
加賀百万石の象徴・金沢城の歴史と見どころ
金沢城は、石川県の県庁所在地・金沢市の中心にそびえる、加賀藩のシンボルとも言える歴史的な城です。その始まりは1583年、豊臣秀吉の命を受けた前田利家が金沢に入城したことに端を発します。それ以来、金沢城は加賀百万石の本拠地として栄え、前田家の支配のもと、江戸時代を通じて発展を続けました。
この城の最大の特徴は、その防御構造の巧妙さと、白漆喰で覆われた美しい外観にあります。金沢城には天守は現存していませんが、その代わりに石川門、河北門、菱櫓、五十間長屋などの櫓や門が修復・復元され、当時の面影を色濃く残しています。特に石川門は国の重要文化財にも指定されており、その威風堂々とした佇まいは訪れる人を圧倒します。
敷地内には広大な芝生や堀、石垣などが残っており、散策コースとしても魅力的です。春には桜が咲き誇り、夏には新緑が美しく、秋には紅葉が敷地一面を染め、冬には雪化粧をまとった城が幻想的な景観を見せてくれます。季節ごとに違った表情を見せる金沢城は、訪れるたびに新しい発見があるスポットです。
また、近年では「金沢城公園」として整備されており、入場は無料。観光客はもちろん、地元の人々にとっても憩いの場となっています。歴史的価値だけでなく、現代的な都市との融合を感じさせる空間となっており、金沢城を訪れることで、過去と現在が自然につながっている感覚を得ることができます。
兼六園との絶景コラボ！金沢城公園で味わう四季の美
金沢城のすぐ隣に位置する兼六園は、日本三名園のひとつとして知られており、その美しさは世界中の観光客を魅了しています。金沢城と兼六園は、元々が前田家の居城と庭園という関係性にあり、現在でも一体となってその歴史的価値と風景美を伝えています。この二つを同時に巡ることで、加賀藩の美意識と戦略性の両面を深く体感することができます。
兼六園の名前の由来は、「宏大」「幽邃」「人力」「蒼古」「水泉」「眺望」という六つの景観要素を兼ね備えていることから来ており、まさに自然と人工美の融合とも言える庭園です。園内には霞ヶ池を中心とした池泉回遊式庭園が広がり、季節の花々や木々が織りなす風景は、どこを切り取っても絵になる絶景です。特に雪吊りが施された冬の風景は、金沢の風物詩として高い評価を受けています。
金沢城公園から兼六園へは徒歩ですぐにアクセスできるため、朝に金沢城の散策を楽しみ、昼には兼六園でのんびりと四季の美しさを堪能するのが定番コース。春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色と、一年を通して違った顔を見せてくれるので、何度訪れても飽きることはありません。また、兼六園内には休憩所や茶屋も点在しており、抹茶や和菓子を味わいながら庭園の景色を眺めることができます。
さらに、園内には明治時代に建てられた「時雨亭」や、加賀藩主が使用していた「成巽閣」など、歴史的建築物も多く残されています。これらを訪ねることで、庭園だけでなく当時の文化や暮らしを深く知ることができ、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができます。
前田家ゆかりの尾山神社と金沢城下町の風情を楽しむ
金沢城を訪れた際にぜひ立ち寄りたいのが、金沢市の中心に位置する「尾山神社」です。この神社は、加賀藩の初代藩主・前田利家とその妻まつを祀っている神社で、城下町の文化や信仰を象徴する存在として地元に根付いています。特に、和洋折衷のデザインが印象的な神門は、明治時代に建てられたもので、ステンドグラスがあしらわれた独特の外観が観光客から人気を集めています。
尾山神社の境内はそれほど広くはありませんが、落ち着いた雰囲気が漂い、庭園や池、灯篭などが美しく配置されており、散策にも最適な空間です。神社の背後には金沢城が見え、前田家の歴史が現在までしっかりと息づいていることを実感できる場所でもあります。特に春の桜、秋の紅葉シーズンには彩り豊かな景色が広がり、多くの人でにぎわいますが、それでもなお静かな時間が流れているのがこの神社の魅力です。
神社の近くには、かつての城下町の風情を残す「長町武家屋敷跡」もあります。ここでは石畳の道と土塀が続き、まるで時代劇のワンシーンに入り込んだような体験ができます。現存する武家屋敷の一部は一般公開されており、実際の当時の生活空間を見ることも可能です。また、地元工芸品の店やカフェが点在しており、観光と同時に休憩やお土産選びも楽しめます。
尾山神社とその周辺は、金沢の歴史と文化が色濃く残るエリアであり、ただ歩いているだけでも多くの発見があります。金沢城とセットで巡ることで、より深く前田家の軌跡と城下町の息吹を感じ取ることができるでしょう。
小松城跡と那谷寺で感じる石川県南部の静かな歴史
石川県南部の小松市に位置する小松城跡は、金沢城ほどの規模こそありませんが、加賀藩の支藩である小松藩の拠点として知られており、歴史好きには外せないスポットです。小松城は、加賀八家と称される重臣の一つ・前田家の支流によって支配されていた場所であり、政治的にも軍事的にも重要な位置を占めていました。現在、天守や櫓は残っていませんが、城の一部が整備された公園として地元の人々に親しまれており、石垣や堀の一部を見ることができます。
小松駅から徒歩圏内にあるため、アクセスも良好で、観光の合間に気軽に立ち寄れるのも魅力のひとつです。小松城跡の周囲には、市立博物館や文化施設も整っており、地域の歴史を学ぶにはぴったりの場所です。春には桜が咲き誇り、花見スポットとしても地元に愛されています。
また、小松市を訪れたならぜひ立ち寄りたいのが、「那谷寺（なたでら）」です。那谷寺は小松城から車で20分ほどの距離に位置し、1300年以上の歴史を持つ由緒ある古刹です。奇岩と苔むす岩肌が織りなす独特の景観が広がり、境内を歩いているだけで心が浄化されるような不思議な感覚を味わえます。特に本堂は国の重要文化財にも指定されており、洞窟の中に仏像が祀られる「岩屋本堂」の神秘的な空間は必見です。
紅葉の名所としても名高く、秋になると境内一面が鮮やかな朱や黄色に染まり、写真映えするスポットとしても知られています。小松城跡と那谷寺を組み合わせた半日コースは、石川県の静かな歴史を感じる癒しの旅にぴったりであり、観光地の喧騒から少し離れた穏やかな時間を過ごすことができます。
七尾城跡で出会う能登の自然と戦国ロマン
石川県北部、能登半島の玄関口に位置する七尾市には、戦国時代に築かれた山城「七尾城跡」があります。七尾城は、日本五大山城のひとつに数えられる名城で、標高300メートルの山頂に築かれたその立地から、壮大な眺望とともにかつての戦国ロマンを体感できる場所です。築城は15世紀後半とされ、能登を治めた守護・畠山氏によって築かれましたが、その後は上杉謙信や織田信長など戦国大名たちの争奪戦の舞台ともなりました。
現在は城の建造物こそ残っていないものの、山全体に広がる曲輪（くるわ）や土塁、石垣跡がしっかりと残されており、戦国時代の面影を肌で感じることができます。特に本丸跡からの眺望は素晴らしく、七尾湾や能登の町並みが一望できる絶景ポイントとして、多くの観光客や登山客に親しまれています。
登城にはハイキング装備が必要なため、軽い登山気分で訪れるのが良いでしょう。約30分〜1時間ほどの登りが必要ですが、その分到着したときの達成感と景色のインパクトはひとしおです。途中には案内板や説明パネルも設置されており、城の構造や歴史を学びながら歩くことができます。
また、七尾市内には温泉地「和倉温泉」もあり、七尾城跡の見学とセットで癒しの時間を過ごすのもおすすめです。七尾の自然と歴史に触れた後は、温泉で体を休めながら、戦国時代の余韻に浸るという贅沢な旅の流れを楽しめるでしょう。
輪島の観光とともに訪れたい門前町・総持寺祖院の歴史散策
能登半島の北部に位置する輪島市は、朝市や伝統工芸である輪島塗の産地として有名ですが、歴史的な観点からも見逃せないスポットがあります。それが、曹洞宗の大本山として知られる「總持寺（そうじじ）祖院」です。現在の總持寺本山は横浜市鶴見区にありますが、元々はこの輪島市門前町に創建されたものであり、その荘厳な雰囲気と深い歴史が訪れる人々を魅了しています。
總持寺祖院は1321年に瑩山紹瑾（けいざんじょうきん）禅師によって開かれ、長く曹洞宗の中心的存在として全国から修行僧が集う場となっていました。1898年に火災によって大きな被害を受けた後、明治時代に本山が横浜へと移転されましたが、この門前町には今も祖院としての施設が残っており、現在も修行や法要が行われています。
境内には、国の重要文化財に指定されている建造物や、禅宗特有の落ち着いた庭園、そして樹齢数百年の杉が立ち並ぶ参道などがあり、歴史的な趣にあふれています。訪れると、宗教的な厳粛さと同時に、どこか懐かしく静かな時間が流れていることに気づくでしょう。観光としてだけでなく、心を落ち着ける場として、多くの人が訪れています。
また、總持寺祖院のある門前町は、寺の門前町として発展してきた経緯から、歴史を感じさせる街並みが残されています。和菓子屋、土産物屋、精進料理の店などが点在しており、散策するだけでも楽しいエリアです。特に、總持寺の教えを活かした精進料理を提供する店では、地元の野菜や山菜を使ったやさしい味の料理を楽しむことができ、旅の疲れを癒すひとときとなります。
輪島市内の他の観光スポット、たとえば朝市や白米千枚田と組み合わせて訪れることで、自然・文化・歴史のすべてをバランスよく味わうことができます。能登の奥深さを感じる旅として、總持寺祖院の歴史散策はぜひ取り入れておきたいコースです。
城巡りの合間に楽しむ加賀料理と金沢グルメの魅力
石川県の城巡りの旅で見逃せないのが、やはり食の魅力です。特に金沢を中心とした加賀料理は、見た目の美しさと繊細な味わいが特徴で、食を通じてその土地の文化や歴史を感じることができます。城の歴史を感じた後は、ぜひ地元で愛される料理の数々に舌鼓を打ちましょう。
加賀料理には、治部煮（じぶに）と呼ばれる郷土料理があります。これは鴨肉や鶏肉をとろみのある出汁で煮込んだ一品で、わさびを添えて食べるのが特徴です。そのほか、加賀野菜をふんだんに使った惣菜や、華やかな盛り付けの懐石料理なども、加賀藩の武家文化に根差した美意識を感じさせます。
また、金沢市内には近江町市場という地元の台所的存在の市場があり、ここでは新鮮な魚介類や季節の野菜、地元名物をその場で楽しむことができます。特に冬の時期には、加能ガニや寒ブリといった旬の海の幸が並び、観光客に大変人気です。市場内にはその場で食事ができる寿司屋や海鮮丼の店も多数あり、活気あふれる雰囲気とともに地元の味を堪能することができます。
さらにスイーツ好きにおすすめなのが、和菓子文化が根付く金沢の銘菓です。落雁や練り切りといった伝統的な和菓子はもちろん、モダンなカフェや抹茶スイーツを提供する店も多く、散策の途中で甘いひとときを楽しめます。
加賀料理の魅力は、ただ美味しいだけでなく、その背景にある歴史や季節感を丁寧に表現している点にもあります。城を巡る中で、食事の一つ一つが旅の記憶となり、土地への理解を深めてくれる大切な要素になるのです。
地元に愛される温泉地・山代温泉で心と体を癒すひととき
城巡りや歴史探索の旅の合間には、心と体をじっくりと癒せる時間が必要です。石川県の加賀地方には、そんな旅人にぴったりの温泉地がいくつもありますが、特におすすめしたいのが「山代温泉」です。加賀市に位置するこの温泉地は、1300年以上の歴史を持ち、かの松尾芭蕉も訪れたとされる由緒ある場所です。
山代温泉の特徴は、泉質の良さと街の情緒にあります。泉質はナトリウム・カルシウム－硫酸塩・塩化物泉で、神経痛や筋肉痛、冷え性に効能があるとされ、長旅や徒歩での観光で疲れた体に最適です。湯上がり後は肌がしっとりとし、体が芯から温まる感覚を得られます。日帰り入浴が可能な施設も充実しており、観光途中にふらりと立ち寄れるのも魅力です。
街全体は古くからの温泉街の面影を残しつつ、現代的なリノベーションが施された施設も多く、懐かしさと新しさが融合した雰囲気があります。中心にある「総湯（そうゆ）」は、地元の人々が日常的に利用する公共浴場で、観光客も気軽に入浴できます。また、そのすぐ近くには「古総湯」という復元された大正時代の浴場があり、ステンドグラスと九谷焼タイルが彩る浴場空間は一見の価値があります。
周囲には、九谷焼のギャラリーや土産物屋、昔ながらの和菓子店などが並び、ぶらりと散歩するだけでも楽しいひとときになります。足湯スポットも複数あり、軽く休憩したいときに最適です。さらに、宿泊施設も多種多様で、老舗旅館からモダンなデザイナーズ宿まで揃っており、好みに応じた滞在が可能です。
山代温泉は、ただの休憩地ではなく、旅の記憶に深く残る体験を提供してくれる場所です。城巡りの歴史旅に温泉という贅沢な癒しを加えることで、石川県の魅力を五感で味わう本格的な旅となるでしょう。
石川県の名城をめぐる旅のまとめと次に訪れたい場所
石川県を旅するなかで、金沢城をはじめとする数々の名城を巡ることは、単なる観光を超えてその土地の歴史と文化に深く触れる体験となります。加賀百万石の中心である金沢城では、前田家の栄華とともに城郭建築の美しさや戦略的設計に感動し、兼六園の優美な景観を通して自然と共存する美意識を感じることができました。
尾山神社や長町武家屋敷跡では、城を支えた人々の信仰や暮らしぶりが垣間見え、小松城跡や那谷寺では加賀藩の支藩としての役割と静謐な仏教文化に触れました。さらに七尾城跡では、険しい山中に築かれた城の迫力と戦国時代の緊張感を実感し、總持寺祖院では宗教と地域文化のつながりを体感できました。
その合間に味わった加賀料理や金沢のグルメ、そして山代温泉での癒しの時間は、旅に彩りと深みを与えてくれます。これらすべてが組み合わさって、石川県の城巡りは歴史的な観光以上の価値を持つ、心に残る旅となるのです。
次に訪れたい場所としては、石川県内にあるもうひとつの隠れた名所「大聖寺城跡」や、白山比咩神社などの古社もおすすめです。また、石川の文化をさらに深く知るためには、金沢21世紀美術館や九谷焼の窯元めぐりも視野に入れておくと良いでしょう。
石川県の旅は、単なる城跡巡りでは終わりません。そこに流れる時間、受け継がれる文化、食の豊かさ、人々の暮らしに触れることで、「旅の目的」が歴史から自分自身の内面へと広がっていきます。これこそが、石川県という土地の真の魅力なのです。
